「映画プリキュアオールスターズF」ED主題歌。
作詞・作曲:水野良樹
編曲:蔦谷好位置
歌:いきものがかり
(敬称略)
降り積もった感情の欠片が、明日へと羽ばたく力になる。
静寂の中、囁くような歌声から楽曲は始まる。凪のような気持ちで耳を傾けたら、直後に押し寄せるエモーションの奔流。一気に粟立つ心が、歌から離れることを許してはくれない。たった1フレーズで聴き手の心を引きずり込む、トップシンガーのみが持つ絶対的な力を象徴するファーストインプレッションだ。
全体的に、曲調は穏やか。舞い落ちる粉雪のように、ゆっくりと、深々と、楽曲は進む。少しずつ降り積もる、様々な感情の欠片たち。雪が地面を覆い隠すように、それらは聴き手の心を満たしていく。想いが詰まった心はやがて脈打ち、解放の場所を求めはじめる。それでも歌は止まらない。そして心はついに、弾ける。
溢れ出したエネルギーは全身を駆け巡り、我々の身体を力強く躍動させる。大地を蹴り、千切れるほどに腕を振り、心の赴くままに今という時間を走り抜けた末に、その速度をもって我々は明日という空へと羽ばたくのだ。
翼はある。この楽曲がくれる、熱い感情のエネルギー。それが、翼だ。
ラスサビの転調はまさに、人が未来へと羽ばたく瞬間を想起させる解放のメロディだ。そのための力は、日々の積み重ねによってこそ得ることができる力。ゆっくりで良い、少しづつでいい。それはいつか必ず実を結び、無限の力の源になる。そんな希望のメッセージが、この楽曲には込められている。
どんなときも決してあきらめない希望の象徴、プリキュアのテーマソングとしてこれ以上ない楽曲といえるだろう。
もう一つ、歌詞に込められた大きなメッセージがある。それは「絆」の力だ。
傍にいる人との絆で、人はもっと高く飛べる。自分に内包された力以上の力を出すことができる。
数多のプリキュアがそうだったはずだ。最後まで孤独だったプリキュアは誰一人としていない。仲間との絆が、巨大な敵を打ち破る力となった。仲間との絆で、困難を乗り越えていく彼女たちは本当に眩しかった。プリキュア達が20年間変わらず紡いできた物語が、歌詞の中に広がっている。同じプリキュアと、友と、クラスメートと、街の人と。時に敵とさえ心を結ぶ、様々な形の絆がプリキュアという作品を輝かせてきたのだ。
「希望」の力と「絆」の力。プリキュアを支える二つの力を描き切ったこの楽曲は、20周年記念映画の主題歌として他の選択はあり得ない、とさえ言える傑作に仕上がっている。
楽曲のタイトルまで心憎い。20年間、たくさんの嬉しい気持ちを届けてきたプリキュアをそのまま表しているようではないか。
来年も、プリキュアは続く。想いの欠片は、まだまだ降り積もっていく。
きっと皆が眼にするだろう。青空の様に澄み渡る、最高の景色を。