10月7日、キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~の始動からもうすぐ1ヶ月。
面白い。非常に面白い。
まず作画が素晴らしい。キャラや背景の線が綺麗で、とても「見やすい」作画になっている。プリキュア5・5GoGoの作画が、あえて線を崩してファンタジー色を強調するデザインになっているのに対して、オトナプリキュアは定規で引いたかの如くリアルな線でキャラと背景を描いている。
プリキュア5シリーズは「夢を見つける」物語。悪い言い方をすれば、そこに「現実」は伴っていない。
一方、オトナプリキュアは、「夢を見つけた」後の物語。そこには常に「現実」が隣にある。
夢を模索する姿と、現実と戦う姿を、作画の違いで如実に表現しているのだ。
プロの仕事を堪能できる。ファーストインプレッションが、すでに大人向けなのだ。なぜなら、この楽しみ方はオトナにしかできないから。
ストーリーも素晴らしい。
この作品では、大人になったプリキュア5が現実の壁にぶつかる姿が容赦なく描かれている。彼女たちは皆、その壁を越えようと必死に爪を立てる。
まだ3話なので、彼女達がどのような形で現実を乗り越えていくのかはまだ未知数だ。
だが、一つだけ言えることがある。
この作品を見て、「現実ってこんなもんだよね」という感想を抱くのは間違っている。
こんな言い方をすること自体が間違っているかもしれない。でも、間違っているのだ。
劇中において、プリキュア5の皆が理想と現実の狭間で苦しんでいる。それは、作品を見ている人なら大なり小なり感じている所だろう。
彼女たちが苦しむのは、強い理想があるからだ。苦しみながらも、理想を実現しようと奔走する。少なくとも3話までの彼女たちは、必死に現実を越えようとしてきた。
のぞみちゃんたちが見せたものは現実への諦念だろうか。いや、違う。
のぞみちゃんたちが見せたものは、理想との戦いだ。
そして、それがどんなに小さなものでも「こうなりたい」「こう有りたい」という理想が無ければ、人は成長できないこともまた現実なのだ。
オトナプリキュアは、現実を描いている。その現実は、理想を持つこと、理想を追いかける事の重要性。
現実の厳しさを通して、夢を捨ててはいけないということをオトナプリキュアは描いているのだ。
プリキュア5シリーズが描いたのは少女たちの夢。オトナプリキュアが描いたのは大人たちの理想。全く違う作風に見えて、伝えたいメッセージは一貫している。
オトナプリキュアはその名の通り、大人向けの作品だ。だからこそ、作品が送るメッセージも大人向け。現実と戦う全てのオトナたちへの、優しくも厳しい励ましがそこにはある。
仕事に、人生に疲れた大人にこそ、このアニメを見て欲しい。
リアルを生きるために必要なものを、きっと感じられる。少女たちの憧れであるプリキュア達がオトナとして頑張る姿は、眩しいくらいに輝いているから。